2018年12月05日

駅伝に懸ける情熱
順天堂大学 陸上競技部・長距離
3選手インタビュー

正月のお茶の間をにぎわす「大学駅伝」。ゴールの瞬間まで何が起こるか分からず、最後までひたむきに走る彼らの姿を見て、応援に熱が入る方もいると思います。これまでに何度も優勝を勝ち取っている名門校といえば、順天堂大学駅伝チーム。彼らは現在、どのような意識で練習に取り組んでいるのでしょうか。今回は、主将の江口智耶選手、山田攻選手、塩尻和也選手の4年生3人にお話をうかがいました。(写真右から江口選手、山田選手、塩尻選手)※以降、敬称略

長距離走の醍醐味とは?

まずは、皆さんが陸上競技を始めたきっかけを教えてください。

江口:小学校のマラソン大会で1位を獲って「楽しいな」と思ったことがきっかけです。中学では陸上部はなかったのですが、全国中学校体育大会(日本中学体育連盟が主催する体育大会)のときに陸上競技部門に参加しました。やっぱり楽しくて、高校では陸上競技部に入部しました。そのときに大学でも陸上競技を続けようと思い、高校3年生で駅伝を意識しました。

山田:僕もきっかけは小学生のときのマラソン大会。1位になりたくて、大会前も練習したりして、1位を獲得しました。球技もやってみましたが、全然思うようにできなくて。自分に一番合っている、活躍できるのが陸上かなと思って中学では陸上部に入りました。

塩尻:僕も幼い頃から、小学校のマラソン大会などで周りの友達よりも速く走れました。漠然とですが、その頃に長距離走が得意なのかもという気持ちはありました。

全員、小学校のマラソンがきっかけなんですね。

山田:ただ、僕は高校時代に、大学では陸上競技はやらないつもりでいました。でもいろいろな人たちと出会う中で、当時大学のコーチだった長門監督とも話す機会があり、「登り坂に向いている」と言っていただきました。そのときは、自分では分からなかったのですが、監督からの言葉の後押しもあり、取りあえず続けてみようと思い、大学でもやろうと決めました。

塩尻:中学時代は、陸上部がなくてソフトテニス部に所属していました。高校に入って、せっかくなら自分が得意なものをやってみようと陸上部に入りました。当初は駅伝を組めるほどの人数がおらず、自分とは無縁かなと思っていたのですが、高校2年生のとき、毎年1月に開催される都道府県駅伝で県の代表に選ばれたんです。

そのような背景があって、今この順天堂大学の陸上競技部にいるんですね。
では、皆さんが思う長距離走の醍醐味とは何でしょうか。

江口:スポーツには「センス」が求められる競技が結構あると思いますが、長距離競技は、もちろんセンスで走れる人もいますが、努力次第で力を磨ける、タイムを縮めることができるのがすごく面白いなと思います。もともと速くなくても、頑張り次第で今まで勝てなかった相手を追い越せることもあるんです。

山田:そうですね、ただ走るだけの単調でつまらない種目だと思う人もいるかもしれませんが、個人の闘いで勝ち負けがはっきりしている。そこが面白いと思います。

塩尻:長距離走を含めて陸上競技全般に当てはまると思いますが、試合ではタイムが出るので順位が明確です。試合ごとに目標設定をして達成できたかどうかが目に見えて分かる。白黒はっきりするところが「醍醐味」だと思います。

スランプを打破するには・・・

普段の調子が発揮できない「スランプ」期は、皆さんにもありましたか。

塩尻:なかなか記録が出ない時期もありましたが、「どうしても走れない」ということは一度もなかったですね。一つ一つの試合ではもちろん良かった悪かったというのはありますが、どんなに練習しても結果が出ないという期間が長く続いたということはありません。今年(2018年)の1月から3月にかけてはケガもあったので、スランプというよりは、たまたまめぐり合わせが悪かったという感じでした。


山田:僕は「常にスランプ」みたいなものなんですが(笑)。強いて言うなら、高校3年生と大学1年生のときですかね。高校3年生の駅伝は1回も走っていないですし、大学1年生の頃も全然走れませんでした。5000メートル走のシーズンベストも自己ベストから20秒くらい遅くて。当時、親が実家の福島から見に来てくれたのですが「そんなに遅くなったの?」と言われて腹が立ったのを今でも覚えています。その言葉を糧に与えられた練習メニューだけではだめだと思って、練習の意図を考え、監督に言われたことを思い出しながら、全部はできないのでプラスになることだけを少しずつ取り入れて実践しました。時間をかけてやっとここまで来たって感じです。

江口:僕は高3のときにたまたまベストが出て、その勢いで走れてきたという部分が大きい。ひたすら走り込んで、速いジョグ練習をして、それで自信がついたという感じだったので。正直、今まさにどうすれば良いか手探りの部分もあります。試行錯誤しながら取り組んでいる最中なので、ここからしっかり結果を出していけるように頑張っていきたいと思っています。

3人の中で一番練習量が多いのは。

山田:量だとこの3人の中だったら僕かもしれません。でも正直、距離を走ればいいってわけではないのかな、とも思っています。質では塩尻です。塩尻のポイント練習(速くなるためのメインとなる練習)での高い設定は僕には出せなくて。江口も質は高いと思います。僕はポイント練習では良い記録が出せないのでその分の補強だったり、ジョグでみんなより長く走ったりしています。

先ほど山田は、練習の意図を汲んで取り組んでいるとおっしゃいましたが、皆さんは普段どのような練習に取り組んでいるんでしょうか。

塩尻:僕の場合、例えば5000メートル走の試合が控えていれば、10000メートル走と比べると距離が短いので、スピードを出して短い距離を走るといった練習をしています。10000メートル走の場合は、距離が長いのでスピードが遅いのですが、少し長めの距離を走ったり、本数を増やしたりします。なので、僕は次の試合に向けて練習への取り組み方を考えるという意味合いが強いです。

山田:僕は「ここを変えたい」ということを監督に相談して、練習の順番や量などを変えたり減らしたりして調整し、コミュニケーションを取りながら練習しています。

江口:週末の練習や、大事なポイント練習でも、週末これだけのことをするから、今回はこれぐらいやりたいということを監督と話して。それに向けて取り組んでいます。

監督に言われて印象に残っている言葉はありますか。

江口:3年の時に全日本インカレに出場させていただいたのですが、結果は予選最下位。すごく叱られました。そのとき「初心に返れ」という言葉を掛けていただいたんです。結果はショックでしたが、その言葉で練習に対する取り組み方を見直しました。そのあと、結果を出すことができ、大きな大会でレースメンバーにも選んでいただきました。今もこの言葉を肝に銘じて練習に取り組むようにしています。

山田:1年の頃、練習が好きではなかったこともあって、サボることもしばしば。当然ですが結果が出ず、監督からはかなり叱られてメンバーを外れされたんです。そのときに、「一回お前を突き放すから」「自分で頑張って這い上がってこい」と言われました。悔しくて、見返してやりたいという気持ちがバネになり、頑張れました。当時は練習とプライベートのメリハリができていなくて、私生活のだらしなさが練習にも出ていたんです。今では監督の言葉があったから「やるときはしっかりやらなければ」と自分を律することができています。

塩尻:僕の場合は、叱咤の言葉ではなく、レースが終わった後に監督に掛けてもらった言葉です。レース後には、よく監督と話をするのですが、良い結果が出たときに「良かったな」と言うのではなく、「このぐらいは出ると思ってた」と言われることが多くて。その言葉が「もっと監督が驚くような記録を出したい」と、自分を奮い立たせてくれる原動力になっています。

トレーニングウェアへのこだわり

トレーニングウェアを購入する際の基準やこだわりはありますか。

江口:動きやすいかどうかの機能性を特に重視していて、その次にデザインです。順大カラーでもある青のデザインが好きです。

山田:実は、ウェアは自分で買うよりも、先輩から譲ってもらうことやいただくことが多いんです。体型が小さめというのもあり、サイズ感がしっくりくるウェアはよく着ます。デザインは、よっぽど奇抜でない限りは、こだわりは特にはないです。過去にデサントの白いウィンドブレーカーを購入したことがありますが、生地と着心地が良かったです。

塩尻:高校時代はよくウェアを買っていましたが、一番は肌触りを優先していました。あとは機能性やデザイン。いくら機能性が良くても、着ていてしっくりこないなと思うものは選びませんでした。

皆さんは普段デサントのユニフォームを使用しているとうかがっていますが、着心地や使い心地はいかがですか。

江口:デサントのウェアはすごく肌触りや機能性が良いと感じています。機能性は抜群だと思います。

山田:先ほども言いましたが生地がとても良くて好きです。ズボンも結構薄く作られていて、履きやすい。薄いズボンは、探してもなかなか無いんです。練習の時もですが、普段の通学にも使ったりしています。

塩尻:デサントのウェアは青系の落ち着いた色合いのものが多い印象ですが、大学のカラーと同じということもあって僕は好きですね。

“勝負服”のようなウェアはありますか。

江口:今年は特に青のウェアをインターバルの時に着用していました。裾にチャックがあり簡単に開閉できるため靴を履いたままズボンを脱ぎ履きできるので、スタート前とかに着用しています。

山田:ルーティンで「これを着る」みたいなウェアはあります。高校までは結構そういうことにこだわっていたんですが、こだわり過ぎるのも良くないなと思ってやめました。それがなかった時に気持ちがブレたりするのが嫌で。でも、ユニフォームは試合のとき以外は絶対着ません。試合のときに着ることで気持ち的にも上がるので。

塩尻:僕はそんなにこだわりはないですが、ハードな練習をするときには、ランニングシャツやランニングパンツは、順大公式の試合用ウェアを着るようにしています。
大会と同じウェアを着ることで、モチベーションを上げています。

選手たちの勝負メシ

体力の源となる食事ですが、皆さんの「勝負飯」があれば教えてください。

山田:勝負メシと決めているものはないです。大会後にお酒を飲むことが自分へのご褒美かもしれません。

江口:僕はあまり食に関心がなくて(笑)。

塩尻:昨年まではレースの1時間前にバナナを食べて試合に臨むことが多かったんですけど、最近はゼリー系のものを口にするようになりました。最近ですと、「麦茶」かな(笑)。夏でも冬でも飲んでます。

将来の目標

陸上競技における、皆さんの将来の目標を教えてください。

塩尻:今は5000メートル、10000メートル、3000メートル障害をやっていますが、今後挑戦する種目も含め、その中で一つ日本記録を目標にしています。

山田:僕は冬の駅伝を中心に目標設定していて。正直、入部当初は4年間のうちで1回走れればいいかなって思っていたのですが、2年目で走れました。でもそこから区間の順位やチームの順位とかにもこだわるようになって。今回は区間賞獲得を視野に入れながら、チームでの順位にもしっかりこだわっていきたいなと思っています。大学を卒業しても陸上を続ける予定ですが、本格的に打ち込めるのは大学までになると思うので、やはり駅伝が最終的な目標になるかなと思っています。

江口:僕も入学当初は冬の駅伝で走りたいと思って入部しました。去年出場できたのですが、まったく貢献できなかった。その結果、2019年のシードも落としてしまった。次の駅伝は4年間の集大成でもあるので、しっかりとチームに貢献して、主将としても最後はチームに何か恩返しができたらなと思っています。

あなたにとって「駅伝」とは?

塩尻:僕は陸上長距離もやっていますが、長距離走やマラソンとは違う、一つのスポーツという感じですかね。同じ長距離を走るとはいえ、駅伝は別物という印象です。5000メートルや10000メートルは個人のレースなんですが、駅伝となるともちろん一人では出場できなくて、メンバーがいて初めて走れる。各区間を一斉にスタートするわけではなく、たすきをつないで初めて走っていけます。

山田:最終的な目標が冬の駅伝なので、自分にとって駅伝と聞かれたら、やっぱりその大会を指します。山道が得意な僕にとって冬の駅伝は「山登り」のようなもの。「山」だったら得意なので、チームのみんなに貢献できると思います。「秩父宮賜杯 全日本大学駅伝対校選手権大会」では山道がないので、チームを助けられるような働きはあまりできなかったのですが、冬の駅伝ならチームが多少遅れをとっても、ある程度自分のところで挽回できるという自信はあります。

江口:順大には塩尻というエースがいますが、駅伝はその人頼みではだめだなと感じています。逆にエースがいなくても、全員が一定以上の結果を残すことができれば上位を狙うことも可能です。そういうのを見ると改めて駅伝は面白いなって思って。僕らの場合、レース中は塩尻のお陰でリードを広げられたり、冬の駅伝だったら山田の登りで差を広げられたりできるのですが、そのリードをどう最後までつなげていくかが勝負どころです。駅伝は本当に何が起こるか分からないし、一人が速くても誰か一人がダメだったら順位が変動していきます。みんながいかに力を発揮するかで、結果が変わってくるところがやはり面白い競技だなと感じます。

江口選手、山田選手、塩尻選手、ありがとうございました!

<プロフィール>

江口智耶/1996年7月10日生まれ、長崎県出身。

福岡県大牟田高校を経て2015年に順天堂大学に入学。
第94回「東京箱根間往復大学駅伝競走」では6区を務める。

山田攻/1997年1月17日生まれ、福島県出身。

学校法人石川高等学校を経て2015年に順天堂大学に入学。
第94回「東京箱根間往復大学駅伝競走」では5区を務める。

塩尻和也/1996年11月8日生まれ、群馬県出身。

群馬県伊勢崎清明高校を経て2015年に順天堂大学に入学。
第94回「東京箱根間往復大学駅伝競走」では2区を務める。
2018年に開催された日本インカレ3000メートル障害物距離走で優勝した。