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2019年10月04日

日本人初の快挙、
PTL®欧州アルプス300kmを駆け抜けたNadeshiko JAPON

inov-8アスリートの湯浅綾子選手が、TRAILROC  G 280を着用して出場した世界トップレベルの山岳縦走レース「PTL®」で、およそ300kmを無事完走しました!ヨーロッパアルプスを1週間かけて駆け抜けた湯浅選手に大会の感想を伺いました。

2019年8月31日(日)14時7分25秒(現地時間)、夏空がどこまでも広がる快晴の中 inov-8アスリートである湯浅選手は仲間と共に祝福と歓喜に包まれたシャモニーの街にフィニッシュしていた。それはPTL®を日本人女性チームが初めて完走した瞬間でもあった。

この時、湯浅選手本人が一番驚き感動し、そして安堵したに違いない。

Team Nadeshiko JAPONとして150時間7分2秒という途方もない時間をかけて、3ヵ国(フランス・イタリア・スイス)をまたぐヨーロッパアルプスの山々を超え掴んだ自分へのご褒美。

【PTL®(La Petite Trotte à Léon)はフランス・シャモニーで行われるUTMB(L’Ultra-trail du Mont-Blanc)の姉妹レースとして開催され、今年で12回目となる。制限時間152時間30分。距離300キロ。累積標高獲得数25,000m。二人一組か三人一組でのチーム戦。】

シャモニーへ出発する数日前に会った彼女は、どこか楽し気で慎重になりがちな準備にも「普段通りに臨んでいれば大丈夫ですよ。多分…」と笑顔に話しながらもどこか冷静。「唯一不安なことと言えば英語が喋れないから言葉が理解できるかな~」と言った具合である。

初の海外レースでPTL®という壮大な自然との闘いに自ら身を置こうとしているのだから十分肝も据わっていると言えよう。

そんな彼女も自然の中で身を守る山道具の事になると話に力が入る。
300キロを走破するために選んだのがinov-8の新作シューズTRAILROC G 280
アウトソールにはしなやかで強度がある新素材グラフェンを搭載した、岩稜地帯が多いヨーロッパアルプスには最適な1足だ。

湯浅選手が「inov-8の中で一番気に入っているのがこのTRAILROCシリーズで初代からずっと愛用し続けています!」と一言。真面目な話をしたかと思うと、「それと行動食には大好きな柿ピーは絶対に持参しまーす。マストアイテムです!」と楽しそうに話す辺りが湯浅節だったりするのだろう。(この後大好物の柿ピーを日本に置き忘れるとは本人も思っていなかったこと)

山を走るきっかけとなったのは今から約8年前、その頃は会社員として日々忙しく働く毎日で週末は疲れてダラダラと家にこもりがちだったという。そんな中「このままでは怠けるばかり何か趣味を持とう」と、思いつく事を紙に書き出し一番お金がかからない「ジョギング」が消去法で残りそこから家の近所を走り出す。それが2009年の話。そして走ることが楽しくなってきた頃2011年に友達から「山を走りに行かない?」と誘われる。

その後今ではメジャーになったトレイルランニング大会に出場し好成績を残していく一方、ここ数年で一人地図を開き行ったことがない山へできるだけ長く身を置き、自分が歩き走ってきた稜線を振り返りそしてまた見果てぬトレイルを探訪することに時間を費やすことが増えているという。

こうやって月日が経った今でも彼女がここまで山へ向かうことに夢中になる理由はなんなのであろう。PTL®を完走して帰国したばかりの湯浅に再び会って話を聞いた。

約7日間も連続で山に浸っていたPTL®完走者から出てきた言葉にはやはり説得力がある。当事者にしか体験できなかった一つ一つのストーリーを丁寧に説明してくれた。

スタート約30キロ地点でチームメイトの一人が体調不良で戦線離脱をすることになってしまったこと。ヨーロッパアルプス独特の自然環境(乾燥した空気が喉を傷め、日中の日差しは非常に強く体力も精神力も奪っていく)に身体が慣れていくまでのこと。山の上でやむなくビバーク(野宿)をして仮眠を取ろうとしたが地面が硬すぎてテントを固定するペグが地面にささらずそのままツェルト(簡易テント)に包まって寝たこと。後半は眠さと疲労から制限時間に間に合わずフィニッシュできるか心の中で不安がずっと募っていたことなどなど…。過酷な状況が追憶されていく。

聞いているだけでただただ大変そうと思うばかりだが、彼女はそれを明るく楽しそうに話す。

あの大好物の柿ピーを日本に忘れたことや、途中大切な行動食を落としたことに気づかずスイス(物価が非常に高い国として有名)の山小屋で慌てて高カロリーのスナックバーやお菓子を買い足したこと。「アルコールはゴールしてから沢山飲もう」と決めていたけど実はちょっとだけライフベース(選手が事前に預けたドロップバックを受け取ったり休息ができる場所)で飲んでしまったこと。「山に登っている内に消えちゃうから」と「眉は何度か書き直しました」とも。ここでも湯浅節は炸裂である。

そしてクロージングセレモニーではシャモニーへフィニッシュした全PTL®フィニッシャーが壇上に上がりカウベル(完走者に贈られるベル)を鳴らす。溢れんばかりの群衆は最大限の賛美を一人一人に送りフィナーレを迎えた。

湯浅選手とNadeshiko JAPONはその賛美に酔いしれたことだろう。本当のところはモンブランビールを飲み過ぎて酔っていたのかもしれないけど…


話の最後にこんな質問をしてみた。

Q:「あなたから「山」がなくなったらどうしますか?」

A:「多分、10年前と同じで週末は家でゴロゴロして引きこもり生活になると思う」

その言葉を裏返すと「私はそれだけ山にぞっこんなんです!」と聞こえてくるような。湯浅選手にとって山は人生を変えてくれた伝道師のようでもあり、掛け替えのない友達のような存在。地図を広げれば無限に広がる山々があるように、彼女の山への軌跡も無限に広がっていくことだろう。

少し間をおいてから「シャモニーから帰国してすぐの週末は15キロの薪を背負って歩く歩荷レースに参加していました。とにかく重たくて疲れた~。でもビールが最高に美味しかった!」
やはり最後まで湯浅節は健在である。

湯浅さん着用のシューズはこちら

<プロフィール>

湯浅 綾子(ゆあさ・あやこ)
マウンテンランナー

1979年 埼玉県出身。
2010年に初めてフルマラソンに挑戦。ある日、友人からの誘いで山と出会い、山と遊ぶ楽しさを知り、数々のトレイル大会に出場。白馬国際トレイルや美ヶ原トレイルラン、OSJ KOUMI100で2位、阿蘇ラウンドトレイルで上位入賞。決められたコースを走るだけでなく地図読みも得意。現在は都内の製作会社に勤務する傍ら、Team inov-8のアスリートとして活躍している。

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