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2019年10月15日

ウールは臭いや汗に強いって本当?
スポーツウェアのトレンド素材「ウール」の魅力とは

最近ウール素材がスポーツウェア界でもトレンドということを知っていましたか?繊維界の優等生であるウールは、知られざる魅力をたくさん持っています。ウールならではの機能、ウール素材の生産背景、ウールの未来について、「ザ・ウールマーク・カンパニー」安江滋キーアカウントマネージャーに伺いました。

他の天然繊維、または合成繊維と比べた時の、ウールの持つ魅力はどういったところにあるのでしょうか?

どの繊維もそれぞれが異なる長所を持ちますが、ウールは特に多くの独特な機能を持つ繊維と言えます。

ウールは環境によってさまざまな機能を発揮してくれる素材で、まず注目すべきは「吸放湿性」。ウールは自重に対して最大35%もの水分を繊維自体で吸収することができますが、これは数ある繊維の中でも非常に高い数字で、コットンの約2倍です。またウール繊維が吸湿することによって発熱し、生地が厚い場合はこの熱が保たれます。これが、ウールは暖かい素材と言われる理由です。

一方では、あまり知られていませんが吸った水分を水蒸気として放出し、体から気化熱を奪うことで、高くなりすぎた体温を適温に下げる役割も果たします。環境によって温かくもなるし、涼しくもなる。ウールが持つ「吸放湿性」が、着用者の身体の温度調節を助けて、快適さを維持してくれます。

また、ウール繊維は構造的に繊維の内側に水分を吸収し、繊維の表面で水をはじく作用があるため、汗をかいてもウールの生地は身体に張り付きにくい、という特徴があります。濡れた生地が汗で体へ張り付く不快感がないことに加えて、服と身体の間に適度な空間が保たれることで、汗冷えを起こしにくくなります。

スポーツの分野ですと、汗をかいた後でも、汗冷えが発生しにくく、体温が適度に保たれるという機能が選手のパフォーマンスを助けてくれます。この機能により、近年はスポーツウェアのインナーアイテムなどでも、ウール素材が注目されています。


ウールの構造と身体の水分は深い関係にありますね。

他に身近なところでは、消臭性、防臭性という機能もあります。先ほどお伝えした通り、ウールは構造上、繊維の表面に水分が残りにくいため、臭いの原因となるバクテリアや菌の繁殖も起きづらいのです。

また、ある種の臭い成分を繊維内部に吸着する働きもあります。汗をかいてもウール素材は汗臭さが発生しにくいと言われる理由は、こうした働きによるものです。ウールの持つ構造が、温度調節と、消臭・防臭の働きをしてくれているのです。


また、最近はチクチクしないウールが出てきましたが、何が変わったのでしょうか?

個人ごとの肌感覚の違いもありますが、ウールに限らず太い繊維が肌に当たると、チクリと刺激を感じます。チクチク感の原因は繊維の太さで、ウールの場合は主に羊の種類の違いに由来するものです。

例えば太いウール繊維は「クロスブレッド」と呼ばれる羊の毛であることが多く、肌へ刺激を与えやすいため、現在では主にカーペットなどに使用されています。昔はこれらの太い毛が服にも使われていましたが、今ではあまり使用されておりません。

現在アパレル向けウール素材の多くは、オーストラリアの「メリノ」という種類の羊から採れるメリノウールで、これは細く柔らかい毛であるためチクチク感を感じにくい繊維です。

「秋冬は温かいウール製品を着たいけど、チクチクするのが苦手」という方にとっては嬉しい、肌に優しいメリノウールで作られた高品質な商品が今では売り場に多く並ぶようになりました。


近年、トレーサビリティやサステナビリティの観点からウールが注目されていますが、なぜでしょうか?

まずトレーサビリティに関してお話すると、先にもお話した通りアパレル用ウール素材のほとんどはメリノウールで、細くて柔らか、滑らかで繊維が長いという特徴があり、その主要原産国はオーストラリアです。オーストラリアにはAWTA(豪州羊毛検査機関)という組織が存在し、現地で売買されるほぼ全ての羊毛に関してクオリティの検査を実施しています。こうした仕組みによってウールは原料の出所を比較的追いやすく、トレーサビリティが機能していると言えます。


またウールは天然で再生可能であり、年一回の羊の毛刈りで手に入れられる天然の素材です。サステナビリティについてお話すると、ここには二つの重要なポイントがあります。

一つ目は、ファッション産業における廃棄物の問題です。繊維素材が土壌中のバクテリアに分解されて土に還る性質を「生分解性」と呼ぶのですが、ウールは他の天然素材同様に生分解して土に還るため、マイクロプラスチックのような問題を引き起こしません。

二つ目は、洋服に対する世間の人たちの意識の変化です。環境問題への注目が高まる中、多くの人たちが「自分の服は何で作られているのか」「その服は捨てられた後はどうなるのか」を考えるようになってきています。これは販売する側も同様です。

こうした理由で、ファッション以外の分野でも近年はウールが再注目され、使われる機会が増えてきました。例えば自動車のシートでは皮革や合成繊維が中心的な素材として使われていますが、これらよりも環境へ与える影響が少ないという理由で、ウール素材が改めて使用され始めています。ウールの特性や高い機能性が活きる新たな分野での素材・技術開発が既に進んでおり、これに対してはザ・ウールマーク・カンパニーも様々な支援・取組みを行っています。


ウールが天然素材である魅力や、サステナビリティについてお話を聞いてきましたが、今回のデサントとの取り組みについても教えてもらえますか?

こちらが、弊社から素材提案し完成した、デサントさんで展開される「Marmot(マーモット)」の2019年の秋冬の新作アイテムです。

ポリエステルのような手触りですが、実はこのアイテムで使われている生地はウール100%で、特殊な機械を使って強い撚りをかけた細い糸を、超高密度に織りあげて作られています。

ケミカルな加工やコーティングを加えていないので、先ほどお話した「吸放湿性」「消臭性、防臭性」、またウール繊維が持つ天然のストレッチ性・防汚性も失われず機能しています。

加えてウール100%なので捨てられても「生分解」して土に還り、超高密度の織りで防風効果もあり撥水もします。さらにこのアイテムは、ウール素材へケミカルな加工を加えていないにもかかわらず、ウォッシャブルになっている点も大きな特徴です。

普通のウールの服は洗濯で縮んでしまう恐れがあり、家庭での洗濯にはコツが必要でした。ウール素材の縮みは、洗濯時に濡れたウールの繊維同士が揉まれて絡み合い、くっついてしまうことが原因です。しかしこの生地は超高密度に織られているので、ウールの繊維同士に絡み合う隙間がなく、縮まないため、家庭での通常洗濯が可能となりました。万能素材であるウールのさまざまな機能が詰め込まれた新アイテムです。


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<プロフィール>

安江滋

ザ・ウールマーク・カンパニー
キーアカウントマネージャー

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