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2019年10月29日

四角友里×Marmot
10年間女性たちに愛され続けるコラボを振り返る

Marmotと四角友里さんとの出逢いから10年。今日までたくさんの商品を作ってきました。超ロングセラーとなった山スカート「W'S TREK COMFO SKIRT」から始まり、今では毎シーズン幅広いアイテムを揃えたコレクションを展開。そのたびに生まれるアイテムの数々によって、わたし達の山の楽しみはうんと広がり、新しい世界を見せてくれるのです。Marmotと四角友里さんのコラボレーションの歴史において節目となる年。2019年秋冬コレクションとともに、この10年をご本人と一緒に振り返りました。(TEXT|中島英摩)

四角さんの影響で、山歩きのスタイルにおいて機能性だけではなくファッション性や自分らしさを意識する女性が増えたように感じますが、ご自身ではどのような実感がありますか。

純粋に嬉しいという気持ちがありますね。私が山歩きを始めた16年前は、自分らしい格好ができなくて「命を守る」ということが第一にある機能的なものがほとんど。男性のXSを着たりしていました。今はもちろん機能も大事にしながらも、みんながそれぞれ自分らしいと思える格好で大好きな場所に行くということが広まって、すごくのびのびとしていますよね。

四角さんが山を始めた頃は女性のウエアが少なかったのですね。

同じ生地やデザインのまま、女性なら赤やピンクにしておこうというようなものが多かったんです。種類や色の選択肢も少なくて「こういうものなんだ」「しょうがない」とどこか我慢して山に行っていた時代でした。今では、機能もずっとよくなり、女性ならではの特徴があるものも増えて、わたし自身もより一層山に行くのが楽しくなりました。みんな画一的な格好をするのではなく、多様性や色々な「好き」が受け入れられているこの状況がすごく素敵だなと思います。

手に持っているのはリバーシブル仕様の中綿入りスカート。柄のプリントは四角さんが訪れた日本の山小屋が。さらにボタンの止め方を変えればパンツとしても使うことができる優れもの。もっと詳しく知りたい方はこちら

いまでは山スカートを履いているハイカーさんも増えましたね。

わたしが山スカートを履き始めたのは2004年頃です。スカートどころかカラフルなウエアを着ている人もいなくて・・・。そもそも若い人もいなくて!山に同世代や若い人達が増えたことも嬉しいですね。昔は少し変わった格好をしていたら「山をなめるんじゃない」と怒られたりもしたけど、今はそういうことも少なくなり、それぞれが自分に責任を持った上で自由な時代になったんだなぁと感じますね。

一時期よりも山スカートが落ち着いていることもまた正しい流れなのだと思います。山ガールブームの時には、山スカート一辺倒になってしまって。わたしのなかでは、ロングパンツ、ハーフパンツがあって山スカートがあるという「ボトムスの選択肢」のひとつとして、女性ならではのアイテムである山スカートを提案したかったんです。

今では、行く山にあわせて肌を守ることのできるパンツを選んだり、時にはスカートも楽しんだりするといったように選択肢のひとつとして、山スカートが残っていることが嬉しいですね。

今はパンツも色々な形やデザインがありますよね!

山ガールブームで女性達の数が圧倒的に増えて、結果的にパンツも快適になったんですよね!わたしが最初にスカートを履き出したのも、メンズライクなパンツが合わなかったというのがきっかけなんです。スカートが流行ったことで女性用のパンツのデザインも良くなったことが何より良かったなぁと思いますね。

コラボレーションを始めてから10年になりますが、素材や機能、デザインなど、こだわりに変化はありますか?

機能を一番に……というのは変わらずですね。というのも、相変わらず体力に自信がないんです(笑)。高機能なウェアは、自分の体力やハンデを補ってくれるものであり、山に対しての礼儀や作法として“しっかりしたもの”を着るという考えは今も昔も変わっていません。

経験を重ねて少し難しい山に行けるようになったり、テント泊や雪山ハイキングにも行けるようになったりしたことで、アイテムはレベルアップしています。ちょっと難しいシチュエーションやより長く自然のなかにいるシーンが増えたとしても、快適にいられるようなアイテムが良い。だから、わたしの山のステップアップと同時にコラボアイテムも進化しています。

ご自身もレベルアップされて、シーンが広がったわけですね。

ただ、作る時には必ず、体力がない、山に対して憧れながら不安も抱えている昔の自分に近い女性を想像しながら企画しています。そういった女性達が「可愛い!」という第一印象で手に取った時にちゃんと安心して使えるものであることが大切だと思うんです。例えばこのスカートも、一見普通のスカートに見えるけど、アウトドアウエアとして「大丈夫だよ」と言えるお墨付きを付ける気持ちで作っています。

一方で、旅先で、その土地の愛されている里山に登ったり、下山後に町歩きをするのが好きなので、今日着ているセットアップのように山のウエアでありながら街のシーンにも溶け込むもっとカジュアルなアイテムがあってもいいというように、力の抜きどころもわかってきましたね。

四角さんが着ているのは、ポリエステル100%ながら、ウールのような風合いのロングスカート2wayロングスリーブシャツ。セットアップとしても、それぞれでも着られます。キャンプから旅行、タウンユースにもおすすめ。チャコール、グレー、ブルーの3色展開。

旅先でちょっと町歩きをする時には“山すぎず”オシャレな格好で歩きたいですもんね。

東京の高尾山や京都の大文字山に行く時に、アルプスの岩稜に行くような格好でなくてもいいんだということがわかってきたので、より街と山をボーダーレスに歩けるような旅先のハイキングに対応するようなウエアも増えました。その時々のわたし自身の山歩きの好みがそのまま反映されていくという感じがありますね。

最近は、昔よりもシックな色使いやシンプルなデザインになっているように思うのですが、何か意識されているのでしょうか。

街に馴染むものにしたいという部分が大きいですね。年齢と共に変わってきた自分の好みも反映されています。でも、日本の綺麗な自然の色を使いたいというのは10年前から変わっていないんです。

例えば富士山の赤土の色が実はすごく鮮やかだったりします。華やかな色も落ち着いた色も、自然からインスピレーションを得ています。自然のなかで見つけた色を写真に撮って、いつもデザイナーさんに送るんです。「この葉っぱの色をベースにして、この茎の色をボタンにしてください」とか「夕焼けのグラデーションのここからここまでの色をTシャツのカラーにしたい」とか。デザイナーさんと外に出て一緒に落ち葉を拾って、じゃあこの色にしよう、なんてこともあるんですよ。どの色を着ても自然のなかで映えるものを選ぶようにしています。

10年間で特に印象深い商品はありますか?

やっぱり最初に作ったスカートには思い入れがあります。なにより、最初に作ったスカートが今も変わらずあるのがすごいことだなと思っています。それまでに研究した成果を詰め込んで作ったので、最初の原型から今もほとんど変わっていないんですよね。

2つ目はパンツを出せたことですね。岩稜帯にも行くようになってロングパンツの必要性がわかってきて、自分が欲しいと思えるパンツを作ってみようと思ったんです。ウエストがゴムのサルエルパンツタイプを開発し、いまでは定番アイテムとなっています。当時細身のものが多く、ヒップラインが出るのもイヤだったんです。生理の日や食事のあとのお腹まわりが気になるので、とにかくお腹が楽で、トイレでのズボンの上げ下げも簡単なものを企画しました。

2014年には、カボチャパンツのようなショートパンツも作ったんです。ウエストはゴム、お尻や体型を隠せて、生地はリバーシブル。その頃4日間の縦走もできるようになっていたんですが、毎日生地を裏返して柄を変えることで、気分も変わってやる気が出るんです!今日も新しい気持ちで頑張ろうと思えたり、写真を見返して嬉しい気持ちになれたり。そういう“気分を上げる機能”も付けました。

3つめは、やっぱり、バックバックを作れたこと。バックパックは、集大成ですね。

いつかはバックパックを作りたいとずっと思っていたのでしょうか。

いつかというより、畏れ多くて・・・という感じでしたね(笑)。昔はしっかりとした重いバックパックを使っていて、2008~2009年頃に知り合いのショップで軽いバックパックを買って使い始めたんです。

自分が軽量なものを使うなかで、ここまでのストイックさはいらないかなとか、ここはすごく楽!助けられた!とか、自分ならではの落としどころがわかってきて。そこでようやく自分が欲しいと思うものを作りたいなという気持ちが沸いてきたんです。

それで企画書を書き始めたらものすごくてんこ盛りになっちゃって(笑)。これは世にないちょっとめずらしい、変わったものを作れるなと思ったんですよね。

たとえばどんな部分でしょうか。

以前は三つ折りの小さなざぶとんをよく持っていっていたんですけど、サイドポケットに入れると他のものが入らなくなってしまうので不便だなぁと思っていました。休憩が終わっていざ出発!というときに、まだお尻の下にあることに気づいたりしたことも。結局面倒になって持って行くのを止めてしまいました。だから背面の外側のパッドを簡単に取り外しができ、ざぶとんとしても使えるようにしました。

手に持っているのはバックパックYAMATABI30の背面部分から取り出したマット。

ほかにも、せっかく買ったのに家で眠りがちな山バッヂを付けるところや、トレッキングポールの先についた泥で他の荷物が汚れないようにポール用の隠しポケットもあります。

メッシュのフロントポケットは便利だけど実は意外とゴミ袋やあまり見せて可愛いものでないものを入れたかったりする場所でもあるんです。だからそういうのは隠せるように黒いナイロンポケットとメッシュポケットの二重構造になっています。メッシュ側には“魅せて”良いものや乾かしたいものを入れられるようにと考えました。

細引きやポール用のストラップもなんとなく機能がわからないままに使っている人がいると思うんですが、可愛い柄や色にすることで、そういうパーツにも興味を持ってもらえるんじゃないかと思っています。

これまでの経験から見つけたアイディアが詰まっているんですね。

全体の重量は550g。わたしには軽量性と機能性のバランスはこのくらいが“ちょうどいい”。このバックパックが軽量化の入口になったらいいなと思うんです。そこからもっとディープな世界があって、そこにはエキスパートな方々がいます。わたしのコラボを使ってくれる女性達が、「荷物が軽くなる」という視点をまず持つきっかけになること。それでどんなに自由で楽になるか、そういう体験をしてもらえたらいいなと思っています。

想い出深いエピソードはありますか?

毎回出来上がりに感動しちゃうんですが・・・山の中でコラボの商品を着ている方を見かけるのはすっごく嬉しいですね!それから、購入した方から使っている写真と共にお手紙をいただくのはたまらないですね。

10年目のコレクションは「日本の山の風景の美しさを伝える」をコンセプトにしていて、春夏のコレクションでは高山植物を描いた花柄のアイテムを展開したんです。山で出逢ったことのある花や見てみたいお花に自分の想いを投影させ、日本の美しい自然を身にまとって欲しいなという願いを込めて作ったものです。そうしたら、描かれているお花の名前を書き出して、それがどこに咲いているかをメモして、そのなかで自分が行ける山を探し出して、この夏行ってくれた方がいたんです!ひとつひとつのお花と一緒に写真を撮ってくれて。そうやってウエアやアイテムが人を動かす、山に足を向けるきっかけになれたことはすごく嬉しかったですね。

コンセプトがちゃんと伝わるって嬉しいですね。

ただの花柄が作りたかったのではなく、ちゃんと意味があるんです。自然に対するリスペクトの気持ちを伝えられたらとは思っていたんですが、その意図を越えて山にまで足を運んでもらえたことは本当に嬉しかったです。いつもお手紙や山での笑顔に救われて、励みになっていますね。

もし、もう一度復活出来る商品があるとしたら、どの商品を選びますか?

わたしが復活させたいというよりも、アンケートを取ってみたいです!お手紙やイベントで「あれはもう売っていないんですか?」と聞かれることが多いので、何がまた欲しいのか聞いてみたいですね。毎シーズン、ゼロの状態から作っているので、人気があっても継続しないものもあります。定番もあるけれど、そうやって作っていかないと新しいものが作れない。もうすでにあるものや、このコラボでなくても作れるものを作っても意味がないので、いつも新しいもの、ちょっと変わったものに挑戦したりもしています。

コラボレーションのコンセプトはどのようにして考えていますか?

まず、「今年見てもらいたい景色」をテーマに設定します。自分自身が足を運んだ場所で印象的だった景色を切り取って、それをそのまま柄にしたり、その場所を目指すために必要なアイテムラインナップを考えたりします。

例えば、昔は紅葉ハイクまででシーズンを終えて冬は山歩きをお休みしていたのですが、初めて初冬の山へ、九重を歩きに行ったことがあって。その時にすごく美しい霧氷を見たんです。氷が白い花のようで美しくって!それがその翌年のテーマになりました。その景色を見るためにはソフトシェルがあったらいいな、スノーシューをするためにはこんなアイテムがあったらいいなと想像して、シーズンのライナップを構築する、といった風にしてコレクションが出来上がっていきます。

九重をハイキングされた際の四角さん。

ご自身で企画書を作っていらっしゃるんでしょうか。

紙とペンで手書きした絵で、伝えています!ラインナップのイメージを一覧にしたりして、デザイナーさんに送っています。今回の秋冬コレクションの山小屋のイラストは、実際に山に行った時の写真を送って絵に起こしてもらったんです。モチーフだけでなく、見上げた空を柄にしてもらったり、チェック柄のラインを動物の足跡にしてもらったり。なんどもデザイナーさんと話し合いながら作っているんです。

モデルとなった「見上げた空」。実際にデザインを考える時に使用した写真。
「見上げた空」を柄に落とし込んだ。

2019年秋冬の新作シリーズでこだわったポイント、特にお気に入りのものを教えてください。

手に持っているのは、山小屋の柄がちりばめられたリバーシブルスカート。裏返すとインタビュー冒頭の写真のようにシンプルなネイビーの無地に。

今回は「柄」ですね。山小屋柄のウエアってなかなかないかと思います。今年は「日本の山の風景」をテーマにしているなかで、特にわたしが思い浮かべた景色が山小屋です。わたし自身が山小屋に泊まることで見られる景色や人との出会いによって山歩きが深いものになったという想い入れがあるんです。テント泊をするにしても、日帰りでも、山小屋の存在は大きいものです。山小屋の方々への感謝の気持ちを抱く意味でも、山小屋を取り巻く物語を伝えたいという想いで柄にしました。すべて実在する山小屋なので、一軒ずつ連絡をとり許可をいただきました。

デザインのモデルとなった山小屋の1つ、八ヶ岳のしらびそ小屋。
写真を元にマーモットのデザイナーがイラストにしたもの。これがデザインになっていく。「このウェアを着て、実際に山小屋を訪れてくれる方がいたらうれしいな」と四角さん。

セットアップもお気に入りですね!トップスは前後どちらでも着られる2WAYで、スカートは丈を長めにしました。短くないとまとわりついて邪魔かなと思っていましたが、意外と楽! 稜線や岩場などでないハイキングのシーンをイメージして作っています。紅葉や冬枯れの低山に使ってほしいですね。ウールっぽいけど化繊で、下山後の観光地や電車に乗る時にも馴染むデザインです。色は枯れ山に映える色を選んでいて、自然も人も引き立ててくれます。

10年という節目ですが、これからはどんな風にしていきたいと思っていますか。

どうしたいかというよりも、どんな風になるか楽しみですね。「50歳になった時にどんな服を着たいのかな」とか「年齢や経験とともにどんな悩みが出てくるのかな」とか。とにかく次に見えてくる世界が楽しみなんです。

アメリカのJohn Muir Trailに行く時に、周りからタイツを履いているのなんて日本人だけだよ、短パンに生足がいいよなんて言われてパンツを履いていったんです。最終日にだけスカートを履いた時、偶然であったハイカーに「COOL!」と言われて。それはスカートがめずらしかったわけではなく、きっとわたしらしいスタイルが伝わったんだと思います。今はパンツスタイルをすることも多くなりましたが、やっぱりスカートを履くとなんだか嬉しくなるんです。どんなアイテムでもいい、ウエアを通してなんだかちょっと嬉しくなる、顔がぱっと明るくなる、外にでかけたくなる、……そんな気持ちをこれからも忘れずにモノづくりをしていきたいと思っています。

Marmotのスローガンが「FOR LIFE」なんですよ。それは“命を守る”という意味もあるけど、“生きがい”や“人生の楽しみ”という意味もあると思うんです。だから、服をきっかけに山に行きたいという想いや自然と触れ合う喜びを知ってもらえる機会を増やせたらいいですね。

四角友里さんコラボのMarmot商品はこちら

 

<プロフィール>

四角 友里 (よすみ ゆり)

アウトドアスタイル・クリエイター。「山スカート」を日本に広めた、女子登山ブームの火付け役。全国での講演活動や執筆、アウトドアウェア・ギアの企画開発などを手がける。着物着付け師としての顔ももつ。2014年にはMarmotとのコラボウェアが米国のアウトドアギアコンテスト「APEX Awards」を受賞するなど評価が高い。
ニュージーランド永住権を取得し、4年間在住。現在は日本を拠点に、四季折々の自然を味わいながら山歩きの魅力を伝えている。著書に『デイリーアウトドア』、『一歩ずつの山歩き入門』、『山登り12ヵ月』

WEB SITE : www.respect-nature.com
FACEBOOK :www.facebook.com/yuri.yosumi/
INSTAGRAM www.instagram.com/yuri_yosumi/

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