2025.03.18
限界に挑むアスリートや、スポーツを楽しむ人々の多くが経験する、ムレや熱によるストレス。
体を動かす際に⽣じるその不快感を解消するために、デサントは新たな機能を提案します。
背中のはためきによる 空気の流れを研究し⽣まれた
AERO STREAM D-TECH(エアロストリーム ディーテック)、
それは⼈とスポーツの未来を紡ぐテクノロジー。
この機能の開発が始まった当初、想定されていたのは宇宙空間。昼夜の無い無重⼒下では時間感覚の⽋如や筋⼒低下などが⼤きな課題となり、トレーニングやフィットネスは⽋かせません。そこでの動きやすさや利便性を求めて背中に設けた切り替えが、やがて通気性を向上させるために、はためきを利用するという発想へとつながっていきます。その後、この視点を地上のアスリートに適用する形で開発は進み、発汗量の多い背中に空気を通すことでムレや熱の不快感を軽減させるという、新しいウェアの製品化が始まりました。
スポーツシーンでの採用を視野に入れたそのときから、はためきで空気の流れを生むという考え方をどのようにして地上で活かすかの研究に着手し始めました。実際にランナーをはじめとするアスリートたちの協力を得て行われた、研究開発拠点「DISC(DESCENTE INNOVATION STUDIO COMPLEX )OSAKA」(デサントイノヴェーションスタジオコンプレックス オオサカ)での様々な試験や、サンプルのアップデートは数年に及びました。
鍵となるのは運動時の人体の動きと、はためき方の関連性。自社の研究施設では衣服や人の動きをデータ化し、コンピュータ上で把握・再現するモーションキャプチャを用いてそのベストバランスを追求しました。ランニング時のフォームやストライドなどを基に、切り替え部の特に細かい動きまで把握し、空気によってはためく動きをパターン化していきます。
発汗箇所や汗の量を再現するサーモマネキンによる試験の実施。汗をかいた際に⾐服が体にどんなふうに⼲渉するかを⾒極め、⽣地の切り替え線の位置の最適化を⾏なっています。繰り返し検証を重ね、汗をかいた際の不快感を軽減するエアロストリーム‧ディーテックのさらなる可能性を追求していきます。
ランニング動作による、実際のはためきの様子を確認。運動量が増えるにつれて内側にこもる熱や汗などにどのような変化が生じるかを、着用者のフィードバックを得ながら把握し、繰り返し調整。空気の循環はもちろん、動きやすさにも優れ、視覚的にも洗練された機能美へとたどり着きました。
DESCENTE PRO(デザント プロ)は、デサントの中でもアスリートの課題解決を起点に、まだ世の中にないスポーツウェアの開発を目指すカテゴリー。テクノロジーやアイデアによって、スポーツシーンに新たな可能性をもたらすプロダクトを展開しています。実験的な試みがなされたこれらのウェアは、フィジカルだけでなく、⾝につける⼈々の好奇⼼を刺激し、⾼揚感へと繋げることでパフォーマンスを次のステージへと押し上げます。エアロストリーム‧ディーテックもまた、そんな先鋭的な提案のひとつです。
エアロストリーム‧ディーテックのウェアは背面上部のパーツがはためくことで、衣服内の換気が促進されます。汗で蒸れた不快感を生む空気を効果的に排出し、温度の上昇をやわらげることで快適な衣服内の環境を実現。さらに、生地自体にも微細な孔を配置することでその通気性を高めています。これは特殊な編みの構造によって生地を切り替えることなく部分的に機能性を付与する技術“schematech(スキーマテック)”により表現されたもの。身体の中で汗をかきやすい箇所の研究によって裏付けされたデサント独自のスウェットマッピング理論に基づき、より発汗量の多い部位にメッシュ構造を採用しています。
ここまでで触れたエアロストリーム・ディーテックの製品化や実験過程は、デサントの研究開発拠点、DISC OSAKAにて行われています。この施設は1周250mのトラックをはじめとする各種競技向けの設備を備えたスポーツパフォーマンススタジオや人工気象室、サンプルの制作環境などを集約。ここでアスリートたちの意見を吸い上げながらアイデアを形にし、アップデートしていきます。
これは私の前任が考案したもので、宇宙に向けての提案というのは私も実は後から知ったんです。ただ、「ランナーの背中が熱くなる」みたいな話は元々あって、そこから背中の上の方にはためきの機構を設けるということを考え始めました。
そうですね(笑)。それで実際にそのはためきをつくるために最初は重りをつけてみました。10円玉とか、クリップとか。そうやってはためきを促進させようということをやっていたのでそれがユニークだし、新しいなと感じてました。
はい。私は野球をやっていたんですが、特に夏場は昔と比べてどんどん暑くなっているので、それは運動をする上で非常に厄介だなと思っていて。熱くなると発汗が増えて、服が貼り付いてしまって動きにくくなったり、パフォーマンスの低下にも繋がるから、それを軽減するのはすごく大事なことだなと。
ちょっと細かい話なんですが、はためく部分は下のパーツと繋ぐ形になるので、それを当初は部分的にカン留めして、その中を空気を通すという手法で開発していたんです。でも、そうするとプリーツというか、スカートのヒダのようになってしまってそれがデザイン的に良くないな、日常で着にくいなとなって、その辺は改良しました。中の生地を上から吊って通気性を高めたりして、機能性とデザイン性を兼ね備えるようにするのが特に苦労したところで、数年掛かりました。(※特許出願中)
開発していく上で感じたのは、はためきで風を起こして衣服内の湿度を下げる、熱を軽減するにあたり、可視化できない空気の動きを捉えることの難しさですね。センサーを取り付けたりしながら、どういった形状がいいのか、衣服の挙動を測っていくのはすごく難しかったです。でも、実際に出来上がったサンプルを自分で着用して走ってみた際に、背中で風を感じられた時にはいけるなと感じました。
課題を解決する手法は僕以外にもいろいろな知見を持ってるメンバーがいるので、彼らとアイデアを出し合いながら、実現していく過程は楽しいところですね。そして結果として、お客さんや選手たちに届いたときはやっぱり嬉しいですね。「いいね」と一声いただけるだけで、報われる気がします(笑)。エアロストリーム・ディーテックも形にはなりましたけど、まだまだ改良の余地もあると思うので、さらなる快適性を求めていきたいなと、思っています。
正直、製品化に向けては少し時間がかかりました。デサントはオリジンがスキーということもあり、シェルやダウンといった秋冬用のアイテムは非常に強いんですが、春夏のパフォーマンスを高めるアイテムではなかなかヒット商品が生み出せていませんでした。ただ、今の日本では夏の蒸し暑い時期が非常に長くなっていることもあって、このような環境下での対策が非常に重要となってきています。そういった中でこの技術のことをDISCから聞いたとき、どういった形でアスリートの方々や一般のお客様へこの技術を届けることができるのか、という部分ではすごく悩みました。
そうですね。背中の部分がはためくような形状って、世の中のウェアを見てもあまり無いと思うんです。このウェアは背面部分が特殊な構造になっているので、ウェアとして3Dになった際にどうしてもフォルムが崩れてしまいがちでした。どうしたら着用した際にきれいなシルエットを保ち、快適な着心地を維持することができるのか。この部分を妥協なく追求するためにデザイナーやパタンナー、また生産に関わっていただく方々と一緒に詰めていく作業はかなり苦労しました。
デサントでは見た目だけのデザインではなく、機能や技術をデザインすることで芸術の域まで高めていく、ということに挑戦しています。こうした考え方は僕たちMDだけではなく、商品企画に関わるメンバー全員が持っています。ひとつひとつのデザインすべてに意味があり、MDはそうした考えをどう統括してまとめていくかが大事だと思っています。僕は古着が好きなんですが、ワークやミリタリーといった昔の服って需要や用途に応じたデザインがされていることがすごく多くて、意味のないデザインがあまり無いんです。その時代や背景に特化して生まれたディテールが今の時代にも受け継がれて、現代にも受け入れられているじゃないですか。そういうものづくりの在り方が好きですし、自分が突き詰めている仕事観とも似た部分があるなと思っています。そういった後世にも受け入れられていくようなウェアを企画していきたいですね。
良いウェアを着るとやっぱり心が弾むし、パフォーマンスでも集中力を高めてくれます。グッと集中して自分自身と向き合い続けているアスリートはもちろんのこと、スポーツに真摯に取り組む方々が直感的に良いな、と思って感動していただけるようなウェアが理想です。僕は商品企画MDというポジションに就いたときから、気持ちの昂ぶりを醸成するウェアを作りたいとずっと思っています。そのためには、ただ見た目がいいだけでもダメだし、機能的なだけでもダメなんです。細部まで突き詰めて完成されたウェアは人の心を動かすと思っているので、気に入ってたくさん着てもらい、ユーザーの方々と長い年月をともにしていただけるようなウェアを企画していきたいですね。
良いウェアを着るとやっぱり心が弾むし、パフォーマンスでも集中力を高めてくれます。グッと集中して自分自身と向き合い続けているアスリートはもちろんのこと、スポーツに真摯に取り組む方々が直感的に良いな、と思って感動していただけるようなウェアが理想です。僕は商品企画MDというポジションに就いたときから、気持ちの昂ぶりを醸成するウェアを作りたいとずっと思っています。そのためには、ただ見た目がいいだけでもダメだし、機能的なだけでもダメなんです。細部まで突き詰めて完成されたウェアは人の心を動かすと思っているので、気に入ってたくさん着てもらい、ユーザーの方々と長い年月をともにしていただけるようなウェアを企画していきたいですね。
北海道出身。大学・大学院時代には「冷却衣服の開発」というテーマで研究に従事し、デサントではDISCの立ち上げ時からR&Dに配属される。10代から続けてきた野球とキャンプが趣味のアクティブ派。
新潟県出身。新卒でデサントに入社し、マーケティング部門を経て2年前からMDを担当。PROシリーズに携わり、世界各国のトップアスリートや国内の実業団などに向けたプロダクトを手掛けている。
わずかなコンディションの違いが結果を左右し得るプロのアスリートたちにとって、不快感の軽減は大きな意味を持ちます。エアロストリーム・ディーテックは、そうしたプレイヤーたちが持つ知見を取り込むことで完成したもの。彼らがプレーに集中し、今以上のパフォーマンスを叶えるために。その技術の粋を集めたウェアに袖を通したアスリートたちの肖像と、その証言。
「今までの練習着とは違って素材感が少しつるつるとしていて、肌触りがいいなというのが、エアロストリーム・ディーテックのウェアを着たときの最初の感想。実際に着て動いてみて、たくさん汗をかいたときの不快感がこのウェアはすごく少ないように思います。ジャストサイズで着ても動きやすくて、腕を振った時にも突っかかる感じがまったく無くて。シックな色やシンプルなデザインもすごく好み。やっぱり見られて恥ずかしくない服を着ていたいし、それがこういうふうに自分が好きだと思えるものだと嬉しいです。着ると納得するというか、気持ちを切り替えて練習にのぞめるんです。」
「今までのウェアは着て走っているとき、背中に空気が溜まって膨らむなとずっと思っていたけど、エアロストリームディーテックはその空気が背中を通り抜けていく新しい感覚があって、それが心地いい。 熱がこもらないから、より良い状態でいつも動けるんです。その感覚のせいか、走っていてもいつもより前に進める気がして。汗をかいても生地が貼り付きにくいのもありがたい。キャンプで着てたらチームのみんなにも『そのウェア、何ですか?』と結構聞かれるので、これからさらに暑い時期になって、みんなが着ているのが想像できますね(笑)。」