駅伝強豪実業団チームに一問一答!~トヨタ自動車陸上長距離部編~

2020.12.22

駅伝強豪実業団チームに一問一答!~トヨタ自動車陸上長距離部編~

駅伝強豪実業団チームに一問一答!
~トヨタ自動車陸上長距離部編~

年末年始の駅伝シーズンをデサントのユニフォームを着て戦う、トヨタ自動車陸上長距離部に特別インタビューを実施しました。
トヨタ自動車陸上長距離部は、「感動」をチームのスローガンとして、人々に感動をしてもらえるような走りを目指す、実業団を代表する強豪チームです。
今回は駅伝の魅力やチームの特徴について、西山雄介選手、佐藤敏信監督に一問一答形式でお答えいただきました。

記事の後半では、「寺田的陸上競技」でおなじみの寺田辰朗氏に、独自の目線でチームへのインタビュー記事を作成していただきました。
陸上ファン、レベルアップを目指す陸上競技者必見の内容となっております!是非ご注目下さい。

西山選手の一問一答

Q.陸上を始めたきっかけは?

西山中学にサッカー部がなかったので何をするか迷ったのですが、両親の勧めもあって入部しました。

Q.長距離走を始めたきっかけは?

西山小学校の運動会で100mは勝てませんでしたが、長距離走では一番が取れたんです。

Q.競技の好きなところ、嫌いなところは?

西山好きなのは成長が数字で見られるところです。嫌いなところはありませんが、強いて言うなら疲労が溜まるところですね。

Q.駅伝の魅力は?

西山関係者の方たちに恩返しができることです。

Q.大会前はどんなことをしますか?緊張しますか?

西山ウォーミングアップの2時間前には会場に着いて、動きづくりやストレッチにすごく時間をかけます。緊張はめちゃくちゃしますね。

Q.チームに入部を決めたきっかけは?

西山実業団は陸上競技をやってきたなかで最後のステージです。どうせやるなら日本一のチームでやりたいと思いました。ここでダメなら自分はそこまでの選手。日本一のチームで揉まれて成長したいと思って入りました。

西山選手の一問一答

Q.チームの特徴は?

西山競技に貪欲な人が集まっています。1人1人が自分の考えを持っていて、やるべきことを把握している。チームメイトの取り組みがすごく参考になります。

Q.監督さんやチームメイトはどんな方ですか?

西山監督はチームにも個人にも、すごく熱心に指導してくれます。選手個々人の方向性を選手に寄り添いながら示してくれます。チームメイトは全員が全員、違う持ち味で、マラソンをやっている選手たちも1人1人、アプローチが違います。見ていて勉強になります。

Q.ウェアやシューズへのこだわりは?

西山練習ウェアなどチームで着用していますが、通気性や保湿効果、関節の動かしやすさなどが気に入っています。ジャージはお洒落なので、近くのスーパーに着ていくこともできます。シューズは他社製品ですが自分の状態や路面に合わせて変えていて、合宿には7~8足持っていきます。

Q.デサントのイメージは?(ブランド、商品)

西山最初はスポーツに特化して良い物を出されている印象でしたが、今はお洒落な物も出しているな、という印象に変わってきています。

Q.デサントの担当者の印象は?

西山年に2回シーズンで着用するウェアの説明会をしていただいていますが、丁寧に説明をしてもらい、商品をより良くしようという熱意が伝わってきます。着ている人のことを最優先で考えてくれて、人柄もすごくいいので、こちらの要望も伝えやすいですね。真摯に聞いていただいています。

Q.最後に今後の大会への意気込みを!

西山チームとしては優勝しかないので、優勝だけを目指しています。個人では区間賞を取ってチームに貢献したいです。

佐藤監督の一問一答

佐藤監督の一問一答

Q.監督として心掛けていることは?

佐藤監督強いチームにすることです。

Q.選手とのコミュニケーションで心掛けていることは?

佐藤監督試合はもちろんのこと朝練習や体操の動き、元気の無い時など、ちょっとしたことを私なりにキャッチして声をかけています。コーチに任せたり、放っておいていい場合などもあったり、色々なケースがありますが。

Q.駅伝の魅力は?

佐藤監督日本の文化と思っています。好調な選手もいれば不調の選手もいる。不調に終わった選手の分を、次の選手がカバーする。そうした思いと汗の染み込んだタスキをゴールまで運ぶスポーツは他にありません。トヨタ自動車の、従業員みんなで頑張る社風にも合致しています。日本独自の良いスポーツです。

Q.実業団チームにとっての駅伝とは?

佐藤監督陸上競技は基本個人で、日本を代表して出場するオリンピックや世界大会が目標となりますが、企業スポーツとして、一体感を持ってチームでやることに意味があります。

Q.今後さらに駅伝を盛り上げるには?

佐藤監督大学駅伝のレベルが上がっていますから、そこで活躍した選手がさらに高みを目指せるように、マラソンやトラックの5000m、10000mも一緒になって盛り上げられたらいいですね。コースを応援しやすいように周回コースにするとか、クイーンズ駅伝で実施していたリモート応援をするとか、みんなで知恵を出し合って盛り上げたいと思います。

Q.駅伝の監督としてのやりがいは?

佐藤監督トヨタ自動車は勝つことが求められるチームです。プレッシャーもありますが、できると思ってやっています。常に勝つんだ、という気持ちで取り組めることはやり甲斐かもしれませんね。

Q.ライバルチームはどこですか?どうしてそう思いますか?

佐藤監督今回もデサント製品を着ている旭化成と富士通でしょう。旭化成は4連勝して、駅伝を知っているチームです。富士通もタレント揃いで、穴のない布陣で来るでしょう。

Q.監督としてプレッシャーや難しさを感じることは?

佐藤監督自分が描いているものと、選手のこうしたいという部分をすり合わせてやっています。その通りに行かない大変さもありますが、修正して1本のレールに乗せられた時はうれしいですね。

Q.駅伝のメンバー選出はどのような過程でされますか?

佐藤監督流れが多少違うこともありますが、中部実業団対抗駅伝から例年同じ練習の流れでやっているので、その流れに上手く乗った7人の選手が1月1日にしっかり走ってくれると思います。

Q.チームの特徴は?

佐藤監督若手からベテランまで、幅広い選手層のチームになりました。ベテラン、中堅、若手とどの層にも2~3人ずつ力のある選手がいて、良いメンバー構成になっています。

Q.西山雄介選手の特徴は?どんな選手ですか?

佐藤監督もともと高校駅伝でも、エース区間の1区区間賞を取った選手です。細かいところに目が行きすぎていましたが、昨年あたりから重要なところが分かってきて、昨年の中部実業団対抗駅伝くらいから自信を持ち始めました。今度の大会でもキーとなる選手です。

Q.チームのユニフォームやウエアへのこだわりは?

佐藤監督チェッカーフラッグをイメージしたデザインにこだわりました。デサントの担当者の方と何度も、念入りに打ち合わせをしましたね。冬物の保温性と軽さ、速乾性など、デサント製品は常に進歩していますね。

Q.デサントのイメージは?(ブランド、商品)

佐藤監督陸上界ではウェアで勝負しているメーカーというイメージです。駅伝の強いチームが着用していますよね。

Q.デサントの担当者の印象は?

佐藤監督前の担当者が伝説的な人だったので大変だと思いますが、その下で鍛えられているので期待しています。

Q.最後に今後の大会への意気込みを!

佐藤監督旭化成、富士通のデサントウェアのチームが強いですね。Honda、GMOインターネットグループも含め、どこが勝ってもおかしくないのですが、ウチも1月1日にベストな状態の7人を揃えて勝ちに行きます。社会はコロナで大変な状況ですが、皆さんを元気付けられるよう、トヨタ自動車らしい走りをして日本一を目指します。

寺田辰朗氏インタビュー記事

駅伝をきっかけに成長している西山

 西山雄介がブレイクしたのは入社3年目の昨年(19年)のこと。11月の中部実業団対抗駅伝3区で区間新&区間賞の快走を見せ、初出場の全日本実業団対抗駅伝3区でも区間新&区間賞。11人抜きで3位に浮上し、チームの2位入賞に大きく貢献した。

 全日本実業団対抗駅伝の注目選手の1人に挙げられてはいたが、3区には西山よりも実績が上の選手が何人も出場していた。予想を上回る走りを西山は次のように振り返る。

「下り基調で追い風のコースではありましたが、5km通過が13分30秒台、10kmが27分台と、走ったことのないスピードを経験できました。それを今後はトラックに生かしたいと思いました。動き的にも力みがなく、効率よく走ることができましたが、今年のトラックでも少しずつ、その走りに近づいています」

 10月には27分56秒78と、長距離選手の勲章の1つと言われる27分台をマークした。駅伝で得た走りのヒントを、トラックに結びつけることに成功している。

全日本実業団対抗駅伝では3区での連続区間賞や、最長区間の4区への出場も期待できる。

「チームの目標は優勝しかありません。そのために今年も区間賞を取って、チームに貢献したいですね

5年ぶりの優勝を目指す全日本実業団対抗駅伝に、西山が一段と成長した姿で臨もうとしている。

駅伝と個人種目、どちらも頑張るチーム

 その西山が競技成績だけでなく、練習に対する姿勢など多くの点で尊敬し、参考にしているのがエースの服部勇馬である。言わずと知れたマラソンの日本を代表する選手で、今シーズンは10000mでも7月と9月にその時点の今季日本最高をマークした。

 佐藤敏信監督は駅伝と個人種目の両立について、次のように話している。

「駅伝は会社としても外せないものですが、それ以前に日本の文化でもあるんです。社会の注目度も高く、やり甲斐の感じられる競技でしょう。でもせっかく強くなったのに、駅伝だけで終わったらもったいない。駅伝が通過点と思えるくらいにならないとダメだと、繰り返し言っています」

10000mの27分台も服部、西山、窪田忍、青木祐人と今季だけでも4人が出している。キャプテンの大石港与や宮脇千博も27分台ランナーだ。駅伝を頑張った選手が個人でも結果を出す。トヨタ自動車はその成長サイクルが確立されてきた。

細かい部分まで念入りに行うことが特徴

 そのトヨタ自動車というチームにあって西山の特徴は、細かい部分まで実に丁寧に取り組んでいることだ。レース前の準備にもそれが現れている。

「ウォーミングアップの2時間前に会場入りして、スタートの1時間10分前からウォーミングアップを始めます」

 ウォーミングアップ開始まで2時間も準備に使うのは、間違いなく長い方だろう。10分単位でウォーミングアップ時間を設定しているところはかなり細かい。

「2時間の準備はみっちりやるというよりも休みながら、上半身をメインに、特に肩甲骨を動かせるように動的ストレッチを中心に行います。走っているときに肩甲骨がスムーズに動かないと力んでしまいます。呼吸も上がって、脚も力んで止まってしまうんです」

 学生時代からずっと試行錯誤してきたが、1時間10分のウォーミングアップも含め、昨年の秋に今のやり方に落ち着いた。それだけが理由ではないが、昨秋から西山の快進撃が始まっている。

 丁寧な取り組みが結果に結びついた西山だが、丁寧な部分が行きすぎてマイナスになっていた時期もあった。入社1~2年目のことで、佐藤監督は「情報に影響されて、細かいことに神経を使いすぎていた」という。

「木の幹が根付く前に枝葉を付けようとしても、強風に耐えることはできません」

 西山も佐藤監督と話していくうちにそのことに気づいた。まずはしっかり走ること。幸いトヨタ自動車の拠点(愛知県田原市)には蔵王山という、地道に走り込むのに最適な場所があった。チームとして行うポイント練習以外で、そうした場所も活用した練習にも時間を費やすようになった。

「勇馬さんたちトヨタ自動車で強くなっている人たちは、基礎をしっかりとやっていました。自分が(応用的に)やりたい部分をするためにも、基礎を怠らないことが重要だったんです」

 佐藤監督はこの練習をやれ、と強制的な指示はしない。方向を示すアドバイスをして、あとは選手自身がどんな練習が必要かを考える。その強化スタイルに適合したことで、昨秋から西山の快進撃が始まった。

トヨタで成長することで見えてくる“違う景色”

 トヨタ自動車の全日本実業団対抗駅伝メンバーや区間配置は、中部実業団対抗駅伝が判断材料の1つになる。全長100kmの全日本実業団対抗駅伝に対し中部は80.5kmと短くなるが、各区間の比率が全日本実業団対抗駅伝に似ているのだ。2区がインターナショナル区間、3区はスピードが要求される準エース区間、4区は最長のエース区間と、区間の特徴が共通している。

 西山は入社1、2年目の中部実業団対抗駅伝で、7番目の選手や新人が起用される傾向がある6区に出場した。2年とも区間賞を獲得したが、元旦に向けて状態を上げることができず、2年とも全日本実業団対抗駅伝を走ることができなかった。基礎がしっかりしていなかったからなのか、好調を持続できなかった。

 しかし昨年は中部大会3区で区間賞&区間新の走りを見せ、全日本実業団対抗駅伝でも3区の区間賞&区間新。そして今年の西山は中部の4区で区間賞&区間新と快走した。12月6日の福岡国際マラソンを欠場した服部の状態次第だが、全日本実業団対抗駅伝でも4区を任される可能性がある。

 中部の3区区間賞は窪田忍で、昨年西山がマークした区間記録に3秒と迫った。故障で長期間低迷したが、トヨタ自動車の全日本実業団対抗駅伝2連覇時(15、16年)には、エース区間の4区を区間3位と2位で走った選手だ。中部の翌週には10000mで27分55秒07と、6年ぶりに27分台で走った。全日本実業団対抗駅伝でも3区、あるいは4区も任せられそうだ。

 中部の6区で区間賞を取ったのが新人の青木祐人で、西山が2年前に出した区間記録を12秒更新した。青木はそれにとどまらず、12月4日の日本選手権10000mで27分58秒63と、予想以上のタイムをマークした。中部の時点では全日本実業団対抗駅伝も6区候補だったが、他の区間を任される可能性も出てきた。

 入社1~2年目に伸び悩んだ西山は、分厚い選手層のチームで駅伝メンバーに入ることさえできなかった。しかし佐藤監督のアドバイスに加え、結果を出している先輩が身近にいることで練習姿勢などを学ぶことができた。だから初出場の全日本実業団対抗駅伝で区間賞&区間新の走りができ、「結果を出すことで見る景色が違ってきた」と感じられた。

「10月に27分台を出したときはうれしかったですけど、それも一瞬のことでした。チーム内を見ただけでも勇馬さんは、マラソンがメインでも10000mも自分より速いわけです。もっと挑戦していきたいと思いましたし、これからも結果を出していけばもっと違う景色が見られます。それが今のやり甲斐です」

 トヨタ自動車という環境で己を高め続けていけば、世界という景色も見えてくる。

トヨタ自動車陸上長距離部

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