2019.10.01
メーカーのシューズ開発に関わるなど、さまざまなランニングシューズを見てきました。私がGENTENを履いて感じたのは「飛ぶような感覚」です。
一般に、ランナーは地面に足が接地する時間の短い選手ほどパフォーマンスが高いと言われます。筋力は主に接地中に発揮するので、その時間が短いほど筋発揮時間も短く、結果的に疲労も少なくなるからです。
GENTENのELモデルは、接地時の蹴り出しが軽く飛んでいくような感覚です。実際のデータからも、接地時間が短く、滞空時間とストライドが長くなっています。スパン、スパンと跳ねている感じで、筋力を発揮する時間が少なくて済むはず。たとえるなら“ガゼルの走り”という印象でしょうか。
この感覚を生み出すのはカーボンプレートで、足が接地する瞬間にシューズが屈曲し、カーボンの反発が生まれます。戻り反発が飛ぶ感覚につながるのでしょう。しかもその力が真上ではなく、前方への推進力に変わっています。
シューズの重さも、片方が27.0cmで約185グラムと軽量を実現。薄底で軽く、しかもカーボンの反発性がある稀有なシューズです。厚底シューズの場合、フォアフット走法のような「厚底に合う走法」に変えなければなりませんが、こちらは走り方を変えなくて良いのもメリットでしょう。
もうひとつ感じるのはグラフェンの「グリップ力」です。トップランナーになればなるほど、実はシューズの“滑る感覚”に悩むケースが多くなります。滑りは、接地時の安定感を損なうだけでなく、接地時間を短くするのも困難。グリップが低いシューズでは短時間の接地で力を伝えるのが難しくなります。
グラフェンは、グリップ力にすぐれた素材であり、加えて耐久性も高い。本来、グリップ力を高めるには素材を柔らかくしなければならないため、消耗が早くなるもの。しかしグラフェンは、グリップ力と耐久性という相反するものを両立させています。この要素は、トップランナーにとって魅力です。
個人的に、ELモデルはトップランナーがハーフマラソンや駅伝などのスピードレースで使うのがベスト。フルマラソンならRCモデルが良いでしょう。薄底の分、負担もかかり筋力が必要とされるので、上のモデルになるほど、スペシャリスト向けのシューズと言えます。
※内容は着用による個人の感想です。